紫式部を辿る旅5〜越前和紙の里、紙祖神.岡太(おかもと)神社、大瀧神社
Mariho
和紙の里通りが尽きるところが、紙の文化博物館、さらに奥へ奥へと歩みを進めると、鬱蒼とした森の中に聳え立つ鳥居。ここが紙の製法を村人に教えたという、紙の神様、川上御前が祀られている、越前和紙の聖地です。
国の重要文化財に指定される本殿と拝殿の、複雑な屋根や彫刻の見事さ。今まで数多くの神社に参拝しましたが、他に類を見ない見事な造りに息をのみました。
拝殿の正面には上部に見事な鳳凰、そして四方には龍の彫刻が細やかにほどこされています。
拝殿を守る龍は、玉をしっかり掴み突き出しています。壁面には、中国の故事に基づいた彫刻。ぐるりと一巡すると、時の経つのも忘れます。
紫式部を辿る旅、紫式部が人生の中で一度だけ都を離れて暮らした場所、それが越前国です。父、藤原為時が越前国司となり、一年余りを暮らしました。
藤原宣孝と結婚するまでの、娘時代最後の貴重な一年余りの体験は、紫式部のその後の創作活動に大きな影響を与えたことでしょう。さらに、当時手に入りにくい和紙、その里から程近いところで過ごしていた点も大きなことです。当時薄く漉く技術も生まれ、滑らかな紙は、仮名文字も、連綿も書きやすかったことでしょう。
源氏物語の中の詳細な紙やそれに伴う筆跡の記述には、越前の高度な和紙の存在と知識があったからこそ、と納得します。越前の文化が、作家、紫式部の基礎を育んだともいえます。
時を超え、継承されてきた和紙の文化の素晴らしさ。改めてその紙を使わせていただくことに、感謝と、責任を感じ、背筋が伸びる思いでした。本当にありがとうございます。
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