紙の話
源氏物語を読む上で、大切なアイテムに『文』があります。源氏物語54帖の中、手紙らしいものが登場しないのは、『花散里』の巻くらいで、平安人の暮らしの中で沢山の『文』のやりとりが描かれています。 『文』を書くわけですから、当然筆跡、そして紙が重要になります。今日は、この紙についてお話しましょう。
⚫︎日本でいつから紙は作られたのか
日本で紙が作られ始めた時期は、はっきりわかりません。ただ、4世紀から5世紀には朝鮮半島からの渡来人により紙漉きが行われていたと考えられています。
曇徴(どんちょう)という名前を聞いたことはありますか?高麗王が日本に派遣した僧侶の名前です。絵の具や紙、墨、石臼などの製法を知っていたと、日本書紀の推古朝18年(610年)の記事として記されています。(しかしそれ以前に紙漉きは行われていたとする説もあります。)
そもそも紙とは、水中でバラバラにした植物の繊維を薄く平らに伸ばし、乾かしたものになります。西暦105年頃の後漢の役人、蔡倫が考えた紙の製法は、麻の布をドロドロに煮溶かして作ったと言われています。
⚫︎紙の産地と名前
紙は各地から貢進されていた記録もあります。主な産出国として、越前、美濃、大和、淡路、播磨美作、出雲、土佐などがありました。紙の名前も以下のとおり、たくさん記録されています。
①原料名を示す名前 麻紙、斐紙、穀紙
②産地名、固有名詞を冠するもの 紙屋紙、上野紙、美濃紙
③加工法を示すもの
④形と質を表すもの
⑤用途を示すもの⑤染料の名を表すもの
⑥色相を表すもの
『正倉院文書』の神亀4年(727)から宝亀11年(780)には、実に223種類の紙名があります。
⚫︎平安時代の紙
さて源氏物語の執筆に欠かすことのできない紙。源氏物語の中には紙についての記述がたくさんあります。この話は、また次回。
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