源氏物語~紫式部からのメッセージ⑧
Mariho
中秋十五夜 「鈴虫」第三十八帖
八月十五夜、名月の夕暮れ。自らこの世を捨て、出家した女三宮のもとを、光源氏が訪れます。
光源氏は宮のお住まいの庭を、秋の野の風情に造らせ、鈴虫を放つように計らいます。女三宮への心配り。鈴虫の声を聞きながらの夫婦の語らい(妻は出家していますが)。歌を詠みかわす二人の声、そして、光源氏の低声でお読みになる阿弥陀の大呪が、虫の声と唱和するように貴い音につつまれます。五感の中でも聴覚、音が意識される場面です。
料紙作家大貫泰子先生の秋草のお料紙に書きました。
【釈文】
十五夜の夕暮れに 仏の御前に宮おはして 端近うながめたまひつつ 念誦したまふ「虫の音 いとしげう乱るる 夕べかな」 (光源氏) 「おほかたの 秋をばうしと 知りにしを ふり棄てがたき すず虫のこゑ」(女三の宮)
いかにとかや いで思ひのほかなる御言にこそ 「こころもて 草のやどりを いとへども なほすず虫の 聲ぞふりせぬ」(光源氏)
以下、略
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