「源氏物語」の文①六条御息所の弔問の文

甦る文~六条御息所1 「葵」 第九帖 六条御息所から光源氏へ

新斎院の御禊の日、行列に加わる光源氏の晴れ姿を一目見ようと、六条御息所はお忍びで出かけます。ところが、光源氏の正妻である葵上の車と争いとなり(車争い)、御息所は辱めを受けます。
葵上出産の折、御息所は生霊となり葵上にとりつきます。出産当日、生霊が光源氏の眼前に現れ、葵の上は夕霧を出産した後息絶えてしまいます。光源氏は生霊に六条御息所の気配を感じます。光源氏からの音信も絶え、身体に染み付いた祈祷の護摩の香に自ら心の遊離を悟った六条御息所。不安にかられ、葵上への弔問の文を光源氏に送ります。
◉濃い青鈍の染紙に、いつもよりまして優美に書かれた弔問の手紙
◉菊の枝に付けて、色合いも素晴らしい完璧な文(生霊となった六条御息所を見てしまった光源氏には、その心遣いが一層白々しく感じられます)
【釈文】「人の世を あはれと聞くも 露けきに おくるる袖を 思ひこそやれ」 ただ今の空に思ひたまへあまりてなむ
再現に当たって
①六条御息所の筆跡 かな書道史にその品格第一とされる「高野切古今集第1種」
②紙の素材「関戸本古今集」や「曼殊院古今集」に使用されている染紙※
③紙の色 同上の古筆の染め紙の色の中から、青鈍色を選別。この色に関して多種あり(青鈍色についてはまた次回)、ここでは添え花の菊の蕾と葉の色に近い色を選びました。一説には、青鈍色の空の色とも言われています。悲しみに沈む空の色でしょうか ④紙のサイズ 平安時代の消息のサイズはどのくらいだったのか。ここでは半懐紙より少し小さいサイズにしてみました。 ⑤文の形状 小菊のまだあまり開いていない蕾もある枝に、文を折り差し込む形が多いのでその形状にしてみました。生花の菊と思いますが、ここでは造花を使いました。もう少し蕾のものがあればよかったのですが・・・ (写真参照)
※文中の古筆については「甦る文」の「古筆について」を見てください。

現代の物に置き換えて教えてくたさるのが嬉しいです。