定子と一条天皇~響き合う2人の遺詠
大河でついに定子が亡くなってしまいました。一条天皇の後宮に入内して11年、父関白が亡くなってから悲惨な出来事に次々と遭遇し、天皇だけを頼りに生きてきた后です。大河ドラマでは彼女を愛する一条天皇が政治を疎かにして非難される様子が描かれていましたが、定子を傾国の美女に喩えたのはやはり『源氏物語』のオマージュなのでしょう。
史実では定子が亡くなった後、天皇は一時、定子の面影を求めて妹を愛したようですが、その妹も頓死してしまいます。彼女は懐妊していたので、道長側の陰謀も疑われますが、一条天皇の定子への思いは行き場を失い、さらに深まったのではないでしょうか。 一方、定子も亡くなる前に天皇への思いを詠んだ和歌を残していました。
夜もすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき
(一晩中お約束した事をお忘れでなければ、あなたは私を恋い慕ってくださるでしょう。その涙の色が知りとうございます。)
定子は、天皇が流す涙が嘆きのあまり流す血の涙の色であれば、そこまで愛されて本望だと思ったのでしょう。それでも現世に残す子供たちのことは心残りだったに違いありません。定子は火葬の煙として空に上るより、土葬で地上に残ることを望む和歌も詠んでいました。
煙とも雲ともならぬ身なりとも草葉の露をそれとながめよ
それから11年後、一条天皇は32歳(まだ若い!)で崩御することになります。彰子との間に皇子を2人儲け、道長の宿願を叶えた後でした。亡くなる前に彼が詠んだ遺詠が『権記』に記録されています。
露の身の風の宿りに君を置きて塵を出でぬる事ぞ悲しき
(露の身が風に宿る所に君を置いて、塵の世を出てしまうことが悲しい)
行成はこの歌は天皇が定子を思って詠んだ歌だと書いています。しかし道長は、彰子に向けて詠んだと考え、『御堂関白記』に少し言葉の異なる歌を載せました。
露の身の草の宿りに君を置きて塵を出でぬる事をこそ思へ
(露の身が草に宿る所に君を置いて、塵の世を出てしまうことよと思う)
こちらの「草の宿り」の方が定子の「草葉の露」と響くように思いますが、下句は目の前にいる彰子に向けて詠んだ感じがします。道長は天皇の心中にいる定子の存在を認めなかったのでしょう。その後、一条天皇は火葬に付されますが、実は土葬にしてほしいと道長に伝えていたらしく、『御堂関白記』にそれを後で思い出したと書いています。何だか白々しい感じです。
道長の思惑はどうあれ、一条天皇と定子の純愛は後世まで語られ、人々の心を動かす物語となりました。
定子崩御の詳細はここを参照⇒https://president.jp/articles/-/83790
定子皇后も妹も一条帝も道長側の暗殺の可能制ありの説もあるみたいです だって現代でも暗殺は行われているみたいだし一条帝も道長の娘に親王が出来たとたんにいわば用済みですかね
コメントありがとうございます。定子も一条天皇も色々な事をたくさん経験して疲労しただろうし、一条天皇はもともと病気がちだったから分かりませんが、妹と敦康親王はその可能性がありますね。怖い世の中ですね。